潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
名前のとおり大腸粘膜に潰瘍を作る病気で、原因が分かっていない難病の一つです。
著名人もその闘病生活を公表し、たびたび話題となっています。
日本でも患者数が増加傾向となっており社会問題の一つと言えるでしょう。
2016年の時点で日本における患者数は約16万人と推定されています。
実際、私が医師になって10年以上経ちますが、潰瘍性大腸炎の患者さんは増えている実感があります。決して珍しい病気ではないことを知っておいてください。
原因は分かっていませんが、食生活を含む生活環境の変化や免疫機構、病気の認知度や検査機器の発展が影響していることは 疑いの余地がないでしょう。
現在潰瘍性大腸炎で判明している機序としては、免疫システムの異常であること。ご自身の大腸を異物とみなして攻撃してしまい、粘膜障害、潰瘍形成を起こすのです。
潰瘍性大腸炎の初期症状は「下痢」、「腹痛」で、時々「粘液混じりの出血」や「鮮血」が含まれています。
やがて頻度が増加し、状態がひどくなると、トイレに行く回数が増え、
「発熱」、「体重減少」を伴うようになってきます。
食あたりでない、原因不明の下痢が続いている場合は、
潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群の可能性があり、鑑別が必要となります。
原因はストレス?
実は潰瘍性大腸炎を発症しやすい年齢層があり、10代後半~30代の比較的若い人に多い傾向があります。もちろん50歳を超えて発症される方もおり、
最近は高齢発症・超高齢発症の患者さんも度々みられるようになった印象です。
先に述べましたようにメカニズムが完全に解明されておらず、根治が難しい難病です。
そのため原因も不明で、心理的ストレスが影響したり、消化管バリア機能の破綻や遺伝的要素、食生活の欧米化、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れなどが発症に影響すると考えられています。
潰瘍性大腸炎の分類と重症度
大きくわけて3つの型に分類され、
①直腸炎型(肛門に近い直腸粘膜に炎症がとどまっている)
②左側結腸型(直腸からS状結腸、下行結腸といった、腸の左半分の炎症)
③全大腸炎型(全大腸に炎症が及んでいる)
と、炎症の範囲によって分けられています。
重症度については病変範囲と、ある程度相関があり、直腸炎型よりも全大腸炎型の方が重症化しコントロールが難しい傾向があるようです。
治療は?
繰り返しになりますが、根治困難な難病となっております。
炎症の強い時期と弱い時期を繰り返し経過するため、治療の基本は内科的な薬物療法で炎症を抑えることに徹します。
自己免疫の暴走が病態に関わっているため、それらをコントロールし、調子の良い期間(寛解期)をなるべく長持ちさせることを目標とします。
最近は、治療の選択肢が沢山増えており、外来で十分コントロールできている方を多くお見受けします。
最後に
「潰瘍性大腸炎って難病なんでしょ?自分は関係ありませんよ」
と思われるでしょう。
しかし前述しましたように潰瘍性大腸炎の罹患数は増加を続けており、
30年前のおよそ7倍以上にも及んでいるようです。あなたの身の回りに下痢症状でお悩みの方はおられませんか?
ご不明な点やささいな事でも、お悩みがございましたらお気軽にご相談下さい。