「のど」と「腫瘍」

胃カメラでは「食道」、「胃」、「十二指腸」を直接観察することができます。

最近ではさらに、

「胃カメラをするなら喉(のど)の観察も行うべき」

といった流れが主流になり、「あたりまえ」になりつつあります。

胃と腸 56巻 11号 1412-1418

「のど ≒ 咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)」のことは耳鼻咽喉科にお任せ。

これは今も揺るぎない事実ではありますが、

最近の胃カメラでは「のど」の詳細観察だけでなく、

腫瘍切除といった「治療」までもが可能になってきました。

実際に

「咽頭(いんとう)がんや喉頭(こうとう)がん」が胃カメラで早期発見され、

胃カメラで切除に至る報告がどんどん増えており、私も携わってきました。

<観察のポイント>

胃カメラを口から入れると

「ぅヴォエッ」となります。

おそらくあのGAC○T様ですらも。

この嘔吐反射が、患者様にとっては苦痛であり、

検査する医師にとっては時間かかるし観察不十分だし。

中には憤りを感じる方さえおられるかもしれません。

そのお悩みの一助となるのが、

経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ)鎮静剤(眠って検査)の使用となります。

しかし厳密にいうと鎮静剤を使用しない経鼻内視鏡観察が

一番喉の観察に適しているのは知っておいてほしい点です。

特に「のどの癌の発生リスクが高い方」は、時間をかけて喉の観察を詳細にすべきです。

<のどの癌の発生リスクが高い方>

       ・大酒家(お酒を飲んで顔が真っ赤になる方は要注意)
       ・愛煙家(ヘビースモーカー)
       ・男性>女性
       ・熱い食べ物や飲み物を好む方
       ・野菜、果物の摂取が不足している方
       ・不衛生な口腔環境
       ・食道がんの既往や家族歴がある方

(のどの癌と食道がんは合併しやすく、同時に発見されるケースは珍しくありません)

<治療について>

「咽頭(いんとう)がんや喉頭(こうとう)がん」のイメージというと、

手術によって声が出なくなるなど、負担の大きい治療という印象があります。

どの「がん」も同じですが、最も重要なのが「早期発見・早期治療」です。

早期に発見できれば外科手術を回避でき、発声機能や呼吸機能、嚥下機能への負担を最小限に留めることができ、それぞれの機能をそのまま温存できる可能性が高いのです。

胃カメラや大腸カメラによる腫瘍切除に「内視鏡的粘膜下層剥離術」があります。

なにやら難しい名前ですが、簡単に言ってしまえば名前のまんまで、内視鏡を使用して粘膜の下の層を剥がし取っていく治療です。

実はこれ、食道・胃・十二指腸・大腸だけでなく、

咽喉頭に発生した「がん」でさえも早期なら切除できるのです。

腫瘍が浅く、転移がない初期の状態に限られますが、外科的手術をせずに「がん」が取れます。

<まとめ>

   ・「のど ≒ 咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)」の観察は胃カメラで可能

   ・「のどの癌」とそのリスク

   ・リスクを知って早期発見・早期治療を

   ・早期発見・早期治療で大手術を回避

   ・そのためには定期的な胃カメラが有効なツールです

「のどの癌のリスクが高い」かもしれないと感じた方は、経鼻内視鏡をご検討ください。

ささいな症状やご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

キタさん
  • キタさん
  • 出身:福岡県北九州市
       令和4年4月に熊本へ移住
    趣味:映画、旅行、ドライブ、ゴルフ
    資格:日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医